踊るウィツィロポチトリ


「左あるいは南のハチドリ」こと、メシーカ人の部族神ウィツィロポチトリ。太陽神であることから暗黒神テスカトリポカとはライバル関係にあるといわれますが、2柱共に戦士の神でもあるので、兄弟とみなされたり同一の存在とされることも。
「巫術師の悪計」でテスカトリポカの掌に乗っていたウィツィロポチトリですが、別ファイルで描いていたものの縮小したらほとんど見えなくなってしまったのでこちらで改めて公開します。
ウチのウィツィロポチトリは煙を吐く鏡を装備していますが、これは「自分たちの守護神に更なる権威を」というメシーカ人の願いを聞いたテスカトリポカが貸しているものというMy設定。いや実際煙を吐く鏡を装備したウィツィロポチトリの図像ってあるし、ウィツィロポチトリはテスカトリポカをモデルにしているという説もあるし……。
ウィツィロポチトリにはなんとなくマッチョなイメージがあるんですが、しかしこの絵の前に描いてあったデザインラフでは筋肉の盛りも肌の露出ももう少し控えめでした。いつの間にシャツ脱いだんですか……?
絵に重ねた英文は、『世界神話伝説大系16 メキシコの神話伝説』のネタ元の1つである『The Myths of Mexico and Peru』(Lewis Spence著/1913)からの引用です。ところで、『メキシコの神話伝説』に「アズテック族の三人の巫術師」とあるのは『The Myths of Mexico and Peru』に「The reference is of course to the gods of the invading Nahua tribes, the deities Huitzilopochtli, Titlacahuan or Tezcatlipoca, and Tlacahuepan」と書かれていたのをそのまま使ってしまったんだと思いますが(ナワ人の1派がアステカ(アズテック)人)、そのさらに大元である『フィレンツェ絵文書』に収録されている話では、3人はアステカ人ともナワ人とも書かれていないみたいです(ナワトル語パートしか読んでなくてスペイン語パートは未見な今の私には断言できませんが。『フィレンツェ絵文書』はナワトル語とスペイン語で書かれているけれども、スペイン語パートはナワトル語パートをそのまま訳したものではなく、かなり改変が加わっているようです。ああ、両方を比較できるような日本語訳が出ればいいのに……)。だから、ウィツィロポチトリ&トラカウェパンはともかくテスカトリポカも元々ナワ系の神なのかはよく判りません。トゥーラの建設者たちはオトミ系の民族だったという説もあるんですよね。
……あ。今『フィレンツェ絵文書』読み返したら、ウィツィロポチトリ(と言われているもの)を掌で踊らせて見せたのはトラカウェパンになってる……まぁいいや、今回のはあくまで『メキシコの神話伝説』の「巫術師の悪計」からインスパイアされたものだから。
『メキシコの神話伝説』という本は、著者自身が「(参考文献について)なかんずく主として用いたのは、レウィス・スペンス氏の著作であった。氏の著書は専門的ではない。通俗書の高級なものである。だから科学としての立場からいえば飽き足らぬところも少なくないが『世界神話伝説大系』で狙っている程度にはぴたりと合っているので、主としてこれに拠ることにしたのである」と述べているように、学術書という訳ではありません。なので、史実について考察する際の資料として用いるには注意が必要です。読み物としては読みやすくていいんですけどね。

戻る