ケツァルコアトル神


 アステカの神様で1番人気のケツァルコアトル神……なんですが、きっと多くの方々をがっかりさせていることでしょう。
 でもしょうがないじゃないですか、約翰はケツァルコアトルは白い肌だったとは思ってないんですから。絵文書見てたら褐色だったりその上さらに黒塗りだったりしたんですから。眉毛や唇は、やはり各種絵文書を参考にしています。インパクトがすごかったので、ぜひ自分の絵にも取り入れたくて。手にしているのは放血儀礼等に用いる骨製の錐です。
 ……いえいえ、約翰はケツァルコアトルも好きですよ。テスカトリポカ贔屓なのは否定しませんが。ケツァルコアトルも好きなんですけど、「ケツァルコアトル=善/テスカトリポカ=悪」と単純化したり、ケツァルコアトルを過剰に持ち上げてテスカトリポカを不当に貶めたりするような風潮は嫌いです。「おいおいおい、何だよそれ! ……なぁ、その情報の出所はどこだ? なんでそんなことになってるんだ? 知りてぇよ、私の手持ちの資料にゃそんな話は出てねぇんだ」とぼやいてしまうような話がネット等ではしばしば見受けられるのが、自分とは直接関係ないこととはいえ悔しい。
 人身供儀は現代人にとっては受け入れがたいということがそれらの問題に大いに関わっているであろうことは想像に難くありませんが、それにしても尾ひれ付きすぎ端折られすぎ変質しすぎ。
 そもそも、ケツァルコアトル神は別に生贄反対派じゃないんですよね。1年間テスカトリポカの化身を演じた後生贄にされる捕虜の話は有名ですが、実は同様に、1人の奴隷を40日間ケツァルコアトルの化身として扱った後生贄にするということも行われていたんです。なぜかこちらはほとんど話題に上りませんが。確かに、『クアウティトラン年代記』や『フィレンツェ絵文書』などにケツァルコアトルが人身供儀を否定したという話はあるんですが、でもそれは人間である神官王ケツァルコアトルのことなので。
 「人身供儀なんてイヤだ」というのはまぁ仕方ないとして、ろくに調べずに思い込みで話を作って広めるのはあまりいいことじゃないと思うんですよ。私も気をつけろよ。

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